インタビュー

2016/02/21(Sun)

そば処昭月庵 店主 『石川健太郎さん』

品川区五反田。
都内でも屈指のビジネス街であるこのまちでは、
朝~夕と、忙しく通りを行き交うサラリーマンや、時間主義のタクシードライバーなど、
日夜働く社会人を気遣う飲食店が発展してきた。
とりわけ蕎麦屋は、山手線を挟んだ東西エリアに30店以上が軒を構えている。

その中でも、歴史上最も永くこの街の変遷を見届けてきた老舗が、西五反田にある。
『そば処昭月庵(しょうげつあん)』

85年の歴史を誇り、先代から受け継いできた伝統をずっと守り続けるのは3代目の
石川健太郎さん。

外観

親子代々、その伝統と屋号を固く守ってきた石川さんは、
そば職人としてこの道20年になる。
もともとは『松月庵』という店名も、昭和の初めに出来たということで
『昭月庵』に変わった。
今回そんな石川さんの、蕎麦作りにかけるこだわりと思いを伺った。


~昭月庵と五反田~

石川さん


「私はここを継ぐ前は、他の飲食店に10年ほど勤めていました。
今の昭月庵を受け継いで20年、飲食の経験は30年になります。

そば業界での私のキャリアはまだまだ半人前で
大森(大田区)でそば屋をやっている私の先輩はこの道30年。
先代から受け継いだものと、先輩から教わったことを足したり掛けたりしながら
日々特訓しています。

昭月庵を継ぐためこのまちに戻ってきたときは、
街の景色が随分とかわったことに驚きましたね。
今となってはチェーン店も随分と増えましたね。
昔は高い建物もなかった通りは、いまでは中小企業のビルも立ち並び、
五反田最大の商業モール『TOC(東京卸売りセンター)』も
今ではすっかりこのまちのシンボルとなりました。
昔は個人経営のお店が多かったのですが、いま老舗と呼べる店は川向かいに2軒ほど。
ウチを懐かしがってくれる昔の常連さんも、
たまに久しぶりに食べにきてくれたりします。」


~住宅展示場でのそば打ち教室~


「昭月庵では毎週土曜日にそば打ち教室をやっているのですが
まさかそれを屋外でやるなんて思ってもみませんでした。笑
蕎麦は気温や湿度など、外気の調子によって仕上がりが大きく左右される” 生き物”なので
寒暖の差があり、風も吹く外では生地がすぐ乾燥してしまったりと、
まとめるのにとても苦戦しました。
ですが、参加してくれたご家族連れの方々が無事仕上げて
お土産に持ち帰る様子を見てほっとしました。」

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(屋外でのそば打ち教室は初の試み)

「昨年の夏に実施した“流しそば”も、新しい試みで楽しかったですね。
何より子どもたちが楽しそうに、おいしそうに笑顔で蕎麦を食べる様子がとても印象的でした。
今後も毎シーズンに一回はやりたいですね。
とても、楽しい経験をさせてもらいました。」
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(昨年夏に実施した、「流しそうめん」と「そば」を組み合わせた流しそば
。反応は上々だった。今後夏の風物詩となるか!?)


「昭月庵は、今は母とお手伝いのスタッフさんとで協力しながら切り盛りしています。
五反田に観光や買い物で立ち寄った際には、ぜひうちへ寄って頂きたいですね。
お腹が減ったら思い出してもらえるような、そんな記憶に残るお店にしていけたらなあと思います。」

そんな店主石川さんのおススメは ”鴨出汁蕎麦”
鴨のガラで出汁を取り、熟成した蕎麦つゆを合わせることで風味はとても強くなる。
水分量、生地の厚み、麺の細さ…
毎日毎日、その全てを均一なものにし、昨日と同じものを作り続けることが
代々の伝統を守ることなのだと言う。

鴨出汁そば
(人気の鴨出汁蕎麦。上品な風味が香る)


「二八、十割、玄挽きと…
そば粉の分量や、成分の違いにより、そば自体にも種類があります。

二八はもっとも多くのひとに親しまれている味です。
香りもそこまで強くなく、値段も手頃なためお昼には多くのお客さんが
食べにきてくれますね。
十割は生蕎麦(きそば)とも呼ばれ、いわば蕎麦の最高級品。
その食感とかおりも格別です。

玄挽きは精選した玄そばの状態から石臼で粉にした全粒粉のそば粉で、
噛むと粗さの部分に旨みが凝縮されています。
蕎麦は本来のどごしを楽しむものと言われていますが、
あえて食感を楽しんでもらいたいものです。

いずれもウチが自信を持って出しているものばかりです。
ぜひ一度食べてみてほしいです。」

筆者も、昭月庵に行く際は、その風味と食感を楽しみにしている。
チェーン店では決して出せない、奥深い蕎麦のかおりと、たしかなのど越し。

それは、3代目が85年の伝統を忠実に守り続けてきた証。
しかし、決して保守するだけではなく、未知への挑戦に意欲を示さんとする気概が、
石川さんから感じられた。

故きを温め新しきを知る
職人にも、ときに冒険は必要なのかもしれない。

今日もまた、石川さんの飽くなきこだわりを求めて
のれんを掻き分けるひとたちの活況が通りに響き渡る。

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<そば処 五反田松月庵>
品川区西五反田2-29-10
http://www1.cts.ne.jp/~masu/shinagawasoba/shougetsu.html

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